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2008年 12月 20日
ここ数ヶ月くらい自分のビジネスに専念しまくって、まったく課外活動ができなかった。まさに第一義的にBusinessはBusynessと見つけたり。まあ確かにそれはそれで非常に面白いのは事実なのだが、この期間は論文を読むことも数式を触ることもしなかったので、調整能力ばかりに長けてしまい、知能が確実に低下していっているような気がする。こうやってポリティクスモンキーなオヤジが生成されていくのだろう。これでは、自分の目指している方向性としてもセルフイメージとしてもあまりにまずいので、リハビリを始めることにした。まずは、昔研究していた観測的宇宙論の最近の成果から。
CHANDRA CLUSTER COSMOLOGY PROJECT III: COSMOLOGICAL PARAMETER CONSTRAINTS [http://arxiv.org/abs/0812.2720] この論文は、X線観測衛星CHANDRAを使って、遠くと近くの銀河団について質量ごとに数を数えたものだ。ちなみに質量を求めるには、銀河団の明るさを測れば、星と銀河の元素合成の精緻な原子核理論をベースに求めることができる。論文では銀河団を遠くと近くのものというように二つのグループに分ける。ちなみに距離を測るのは、赤方偏移と呼ばれる宇宙膨張に伴う波長のズレを測ればよい。もちろん宇宙膨張というからにはここに宇宙モデルの仮定が入ってくる。論文ではz=0.025-0.25という地球の比較的近傍の銀河団と、z=0.55-0.9と比較的遠くの銀河団についてグループ分けをしている。 まあ、とにかく銀河団を近くと遠くという二つのグループにわけ、それぞれのグループで重さごとに銀河団の数を数えたというわけだ。一般に物質の間には重力が働いている。そのために通常の見える物質だけだとすると、時間が経つほど(ここでは遠くの銀河団より近くの銀河団のほうが)巨大なつまり重いカタマリができる。これはEinsteinの一般相対性理論から出てくる帰結である。まあ、実際にこれは観測でも確かめられているガチな事実でもある。ポイントは、昔と今とを比べるとどれくらい早くカタマっているか、ということを見極めることである。もちろん、通常の物質だけだと、昔はそれほどカタマってなくてもより早くカタマるために現在のような姿になるし、ここ10年くらい必要性を指摘されているダークエナジーといわれている重力とは反対の斥力作用をもつなんらかのエネルギーがあれば、なかなかカタマらなくなるので、昔であっても結構カタマっている必要がある。ちなみに昔はダークエナジーと宇宙項は同じものだといわれていたが、最近では宇宙項よりも広い概念のエネルギーだと考えられている。そのためのequation-of-stateパラメーター"w"というのが導入されていて、これはもしもw=-1ならば宇宙項と同等であるというものだ。 あ、ちなみに天文学や宇宙物理学では、過去から現在に向かって時間の順序通り、ビデオのように物理現象を見ることができず、現在を起点として過去をみるしかない。だからカタマリの早さ具合をみるには近くの状態は共通として、過去のカタマリ具合を評価することになる。ここではカタマリが早い、つまり通常の物質だけを仮定するならば、過去はあまり大きくないカタマリでも十分であるということだ。カタマリが遅い、つまりダークエナジーの存在を仮定するならば、過去にはそんなに小さなカタマリが多くないはずだ、ということだ。それで、結果は次のようである。 左がダークエナジーを仮定したモデルから導かれる観測結果で、かなりよくフィットしている。このモデルは宇宙にあるエネルギーというか質量のうち、通常の物質が25%, ダークエナジーが75%と仮定したものだ。ちなみにエネルギーと質量はEinsteinの特殊相対性理論により等価であることが示されているので、どちらについて言及してもかまわない。右がダークエナジーを仮定しないモデルで、これだと観測と理論が乖離している。 つまりこの結果は、銀河団のカタマリ進化(クラスタリング進化という)を観測するかぎり、ダークエナジーを75%ほど仮定しないとダメだよ、というものである。もちろんダークエナジーの存在を指摘することは、銀河の全天分布や重力レンズ、変光星の時間変換の観測等の他の観測的宇宙論の研究でも指摘されているし、素粒子論の標準模型を仮定した銀河の進化理論からも帰結できるものというように、新奇性はない。また、ダークエナジーが何かということやダークエナジーの本質的性質に関わる何かということを明らかにしたものでもない。しかし、今回の結果がなかなかにトピック度が高いというのは、銀河団のクラスタリングという通常の物質の重力作用にもダークエナジーの影響を強く考慮しなければならないことを指摘していることである。 論文の後半は、equation-of-stateパラメータ wとダークエナジー密度の評価を、この論文の結果を既に他の論文から得られる結果に足しあげて、それぞれのパラメータの制約条件を推定している。この論文によると、もしも現在が平坦な宇宙と仮定するなら、w=-1つまりダークエナジーはほとんど宇宙項、そしてその密度は75%から70%としても、統計的に間違った結果を与えないというものだそうだ。
by yutakashino
| 2008-12-20 12:20
| Science
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