My online activities
検索
以前の記事
2013年 02月 2013年 01月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 2005年 01月 2004年 12月 2004年 11月 2004年 10月 2004年 09月 2004年 08月 2004年 07月 2001年 01月 カテゴリ
全体 Math Science Book Log Misc Business Music IT Food Topic Movie Art Stat Politics Muttering Off Topic 未分類 ブログパーツ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2008年 04月 22日
うーん、これは…。Structure and Interpretation of Classical Mechanics SICP(Structure and Interpretation of Computer Programs)で有名なGerald Jay Sussmanと、惑星物理学者のJack Wisdomが書いた古典力学の本である。MITの古典力学の講義の一つでもある。人呼んでSICM。SICPと同じように、MIT-Schemeを用いて、数式の一つ一つをリジッドに確認しながら読み進めるスタイルの教科書である。Schemeを使っていることからもわかるように、インプリシットな引数や、値と関数の曖昧な見分けは許さない。すべてエクスプリシットに数式を書き下し、手順通りに微分や積分を実行すれば、計算機であって式を導出できるように、曖昧のないノーションを採用しているのだ。 通常ラグランジアンは、時間と一般座標と一般速度という三つの引数の関数であるが、実は一般座標と一般速度は時間の関数であることがインプリシットに仮定されている。この教科書はそういったインプリシットに仮定することを許さないのだ。従って独自のノーテーションがでてくるのだが、基本的にはすべて式をそのノーテーションを使ってエクスプリシットにするので、計算がムチャクチャ面倒になる。そこで実際の計算にはSchemeを導入して計算の手間を減らすという、なんとも本末転倒な教科書の構成具合に圧倒させられる。しかも、Mathematica, SciLab, Mapleなどの数式処理システム全盛のこの時代にSchemeである。What a freaking classic flavor they have! 思うに、彼らはLisper/Schemer(というかSassmanはLisp/Scheme界の神である)であるからこそ、合成関数の微分(いわゆるチェーン・ルールの適用だ)をするときに通常のノーテーションでは値と関数の区別がインプリシットであることにイライラするのだろう。それで、エクスプリシットに引数を明示し、値と関数を区別するように、力学の教科書をすべて書き直すという暴挙にでたのではないか。 実際のSICMの進行具合は次のようである:ラグランジアン、最小作用の原理で始まり、振り子を例とした例題が続き、剛体となる。そしてハミルトン力学に入ってポワソンブラケットやリウビルの定理などに進んだあと、最後は簡単な力学系となる。説明の一つ一つは丁寧だし、例題はしっかりしているし、Schemeのコードも理解を促進させるし、総じて言うと大変よく書けている面白い教科書だと思う。でも、僕がきちんと読んだのはラグランジアン力学のダンベルのところまでで、後は正直飽きてしまった。だって、独自ノーテーションとScheme使っている以外はあまり新奇性がないから。ランダウのように切れるわけでもないし、ゴールドシュタインのように網羅的でもないし。 なにより、ハミルトン力学に入ると独自ノーテーションを採用したことが致命的であることがわかる。なぜなら、量子力学、電磁気学、そして相対論につながるべきこの重要な定理群、数式群は、他の教科書と一目で比較ができないのだ。他の教科書を参照しようとすると、常に無用なノーテーションの脳内変換を強いられる羽目になる。これは、かなりのディスアドバンテージである。こんなの物理学を階梯として学んでいる学生にとっては意味のない作業である。そのせいなのか、Sussmanという有名人が書いた2001年に出版されたこの本は、すでに7年過ぎているにも関わらずまだ1刷という人気のなさだ。まあ、Webでフリーで読めるということもその理由はあると思うが、フリーで読む程度でお腹一杯というのは正常な反応だと思う。 しかし、このSICMを読む価値はまったくないかというと、そうではないと思う。まさにSICPと同じ効用がある。つまり、この種の純粋な原理主義的な教科書は、プロフェッショナルとして身を立てるということに及ぼす影響は限りなく小さい(もちろんあなたがMITの学部学生だったならその限りではない)が、こいつを通過することで自分に自信がつき、他人に自慢ができるという効用がある。あと、他の教科書と違ったノーテーションで考えることで、余計な知的トレーニングができるという副次的効果もある。ただ、SICPが立脚しているコンピュータ科学という分野と違って、物理学にはもっと格調高く含蓄があり発展性を孕んだ力学の名著がひしめいているために、この教科書はどうしても何を今更感を拭えないのだ。従って、今と同じようにSICMはこれからも不幸な継子扱いされ続けるだろう。僕も次にこの教科書を開くのはいつになるか想像できない。 この教科書は、大学の力学の講義では知的に満足できないジーニアス学部生だとか、昔物理学に関係していたプログラマだとか、Lisp/Scheme好きで力学も学びたいと思っている奇特な市民という超狭い層には受けるかもしれない。またこのSICMは、SICPと同様、あまりに独自なスタイルのために苦労して読む割には、もっと楽に学べる教科書と比較しても、取得できるナレッジの量は変わらない。まあ、悲しい現実ではある。でも、ナレッジは量はなく質であるなんて幻想を信じることができる人にはアリなのではないか。
by yutakashino
| 2008-04-22 00:07
| Book
|
ファン申請 |
||