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2008年 03月 27日
ここ一ヶ月で水泳の世界新記録ラッシュなのである。 先週末もフランス人スイマーAlain Bernardが50mと100mの長水路自由形にて21.50秒と47.50秒という驚異的な世界新を記録した。2月16日以来、水泳の公式大会においてなんと11回の世界新記録の更新なのだ。そして、世界記録を塗り替えるスイマーには共通したある特徴がある。 それは皆、SPEEDO社のFastskin LZR Racerというスイムスーツを着ているのだ。これは既に統計的なフラクチュエーションという事態を超えてしまい、国際水泳連盟も調査に乗り出すほどになっている。そして、現時点でLZR Racerを着ることができる選手と着ることができない選手の間に大きな記録上のハンデがでているのは明らかで、そのことは取りも直さずスイムウェアの革命がきているのだ。 このLZR RacerはNASAのスペースシャトルの摩擦抵抗低減技術と接着技術をスイムウェアに融合させたことを大きく謳っているが、技術開発に協力したのはNASAだけではない。UKのNottingham大学、New ZealoandのOtago大学など、複数の英米豪新加の米国+大英帝国連邦系の国々の国際産学協同技術開発プロジェクトになっているのだ。この記事をみるとその断片を伺えるのだが、例えば計算機流体力学と実際の流体実験を繰り返して、摩擦の起きやすい部分に集中的に摩擦を抑えるようにする工夫を凝らしてるそうだ。ただし、2008年からは素材の表面処理を行う技術は国際水泳連盟により禁止されているから、表面処理ではない別の技術をもちいているそうだ。例えば、摩擦を極限までに減らすために、全身の70%を覆い、肌の水との共振を押さえるため工夫として布のテンションを体の部位ごとに変化させ、そして縫製ではなく接着材で融着されている、といった具合だ。ここに、その技術開発の模様を撮影したプロモーションビデオがある。 ちなみに、2006年までアジアにおけるSPEEDOの販売ライセンスはミズノにあって、ミズノは東レと共同開発で素材の表面処理を行うことで、SPEEDO陣営として世界のスイムスーツの技術開発のトップを走っていた。しかし、2007年からミズノは独自ブランド展開を進める方針に転換し、SPEEDOのライセンスを手放したところ、素材の表面処理をしたスイムスーツの使用を国際水泳連盟から禁止され、SPEEDOの技術も使えなくなり、と泣きっ面に蜂状態である。もちろん、日本水泳連盟にとってもSPEEDOの水着を使えないので、今年の北京五輪の日本の水泳陣は結構ヤバイかもしれない。 LZR Racerを試したどの選手も「こんなにスムーズに泳げるのは初めてだ」という感想を述べていて、カタログ上も2007年のSPEEDOの製品に比べて5%抵抗が少なくなっているそうだ。ちなみに、2007年のSPEEDOスイムスーツFastskin Proは21個の世界記録を作ったそうだ。 ドーピングをしない状態での人間の筋肉の鍛錬やフォームの改善が究極まで進んでいると言われるトップティアの競技水泳において、こういったハイテクスイムウェアにより流体抵抗が減らすことができると、他の競技者よりもムチャクチャ有利な要素となるのだろう。なんともまあ、スゴイ話だ。 ちなみにLZR Racerの値段であるが、$800だそう。世界記録の値段としては安いが、まあ素人が手を出すような価格のスイムウェアではないことだけは確かである。
by yutakashino
| 2008-03-27 01:05
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