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2008年 12月 08日
Made to Stick [http://www.amazon.com/exec/obidos/tg/detail/-/1400064287/]/ アイデアのちから 個人的には半年前くらいに読み終わっていて放置していたが、最近邦訳が出たのでレビューをしておこうと思う。アイデアを人に伝え、そのアイデアを人の頭に焼き付けるために必要な6つの要素を、以下のように分解し、事例とともに解説した本である。 Simple Unexpected Concrete Credentialed Emotional Story この6つの頭文字を繋げ、SUCCESsというわかりやすい単語で表現している。まあ、この語呂合わせもMade to Stick戦略の一貫だろう。ただし、SUCCESsといっても別にそれぞれの要素が明確に分類されているわけではい。ConcreteはCredentialedであるために必要な条件の一つでもあるし、Simple、Unexpected、Concrete、Credentialed, EmotionalはStoryであるためには必要な要素である。このようにSUCCESs要素間の粒度がバラバラであり、そのために自分のアイデアを実際の現場でMade to Stick戦略に従わそうとするときは苦労するに違いない。このように、語呂合わせでMade to Stickを心がけたが、実際には使いにくいツールになっているのは誠に残念である。まあ、これはこの本がメタレベルにおいて、Made to Stick戦略と、論理的・意味論的にきちんと分類することの間で、矛盾を抱えているのだとも言える。もっと言うと、本当にMade to Stickさせたければ、キチンとした論理的・意味論的な分類を重用視するべきで、語呂合わせに拘るべきではない。ただ、Made to Stickというレベルをどのレベルで考えるかという、著者の戦略も見え隠れしていて、深読みすると、現在の構成はなかなかよい落としどころではあるのかなとも思う。 このMade to Stick戦略は、元々がMalcom Gladwellの"The Tipping Point"からヒントを得ているそうだ。"The Tipping Point"では感染的な流行が起きるために必要なルール(”Rules of epidemics")として三つのものをあげている。 Law of the few Stickiness factor Power of context Made to Stickは、このうちの二つめの"Stickness factor"を敷延したものという表面上の構成だが、実際には"Power of context"の話もかなり入り込んでいるので、The Tipping Pointの主旨どおりの"Stickness fator"であるわけではない。 注意するべきことは、この本の主張は、あくまでアイディアを人に伝えるときのテクニックであり、アイディア自身を生み出す方法ではない、ということだ。ここを間違えると、とんでも無く薄っぺらいマーケティングツールの事例テクニック集になってしまう。そう、なにより"Idea First"でなくてはいけないのだ。ただ、例えアイデアがあったとしても、Chap4にもある胃潰瘍の原因がヘリコバクター・ピロリ菌であることを見つけたBarry MarshallとRobin Warrenの例のように、そのアイデアが良くてもなかなか認められないことがあるので、そういうときにこのMade to Stick戦略を取るべきなのだ。あくまで、"Idea first, Made to Stick second"である。 また、この本は事例解説が上手で、リファレンスが充実しているので、より深く周辺情報を探索するためのガイドブックとして使うことができるのが、もしかすると最大の利点かもしれない。事例は学術論文から、新聞記事、著作物まで多岐に渡っているが、意図したのか無意識なのかわからないが、比較的入手しやすいものを列挙してくれているので、大変好感がもてる。以上のように、この本はオススメなのだ。 ただし、である、邦訳版はマッタクもってオススメできかねる代物である。まず、タイトルも訳もひどすぎる。タイトルは意味がわからない。「アイデアのちから」についてなんて一切述べていない。アイデアを「浸透させ、焼き付けるためのちから」について述べた本だ。編集者は本当にこの本を読んだのか?非常に疑わしい。訳も「〜した。〜した。〜である。〜される。」というように、接続詞がほとんど出てこない、文をぶつ切りに並べただけの、英文の直訳ロックだ。これでは、訳者はあまり日本語ができない帰国子女か、それともエキサイト翻訳で下訳をしたかのどちらかとしか思えない。誤訳も散見されて、余計にイタい。アベイラビリティ・バイアスは、「利用可能性バイアス」という和訳が既にある。ググれカス。これでは原書があまりにかわいそうだ。また、こういった行動経済学や行動心理学を一般向けに紹介する本としては、リファレンスが本文よりもむしろ重要なのだが、邦訳版では一切割愛されている。和訳のダメダメさに加えて、リファレンスがないことで、この本の価値は原書より75%くらい割引されてしまうと思う。 そして、このような邦訳版で更に「川に落ちた犬を棒で叩く」ようなヒドサを演出させているのは、解説である。最近書店を埋め尽くす自己啓発オバさんの自慢話を読まされるのだ。このオバさん、何よりヒドイのは、本書をまともに読まずに解説を書いていると推測されるところだ。SUCCESsの初めの5つとかいっているけれど、正しくは6つだよ。続けてヒドイのは、自分の本がMade to Stick戦略を実行したために売れたとかなんだとかを自慢しまくることだ。しかし、その売れた本で強力リコメンドしていた投資信託は、今とてもヒドイことになっているけれど、そいつは意に介さず、自分だけ売り逃げということでいいのですかね。つまり、自己啓発女史にとって、Made to Stick戦略は、勝てば官軍を本旨とした、バカを騙すマーケティングツールに過ぎないということなのだな。このように邦訳で読むのは誠に腹立たしく、原書の25%の価値しかなく、自己啓発オバさんを儲けさせるばかりで、全く薦めようがない駄本である。 原書は最近加筆されリファレンスも充実したようなので、是非とも原書にあたり、邦訳版は読まないように。
by yutakashino
| 2008-12-08 01:45
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