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2008年 09月 27日
Rethinking Capital Regulation
サブプライム問題を引き金に起きたUS金融危機であるが,その原因と帰結そして将来の予防の方針を明確かつロジカルに示したペーパーである.これを読めば,現在のUS金融危機について日本の経済学者やアナリストがしたり顔で解説することなんて間違っていることがわかるし,日本の経済新聞や経済雑誌なんて一切読む必要がない.また,今のPaulson財務長官が米国議会に諮っている救済案が如何に間違っているかを理解できる. 著者はこの問題を語るにまさにその人アリというKashyap, Rajan, Steinである.今年2008年のKansas City連銀のJackson Hole Symposiumにおける政策提言である. このペーパーによれば,危機の原因はプリンシパルーエージェント問題に関連した次の二つのインセンティブ構造が絡んだことにあるそうだ. ・低品質でリスクの高い金融資産に手を出す金融機関のインセンティブ構造 ・その金融資産を購入するのに,短期融資を利用してしまうインセンティブ構造 特に二つ目のインセンティブ構造に絡んでいるのだが,金融工学を屈指して金融資産を証券化してリスクを減らしたつもりなのだが,その資産を購入する資金,つまりギャンブルの掛け金,には短期融資を使うというまったくリスクを減らすことができない選択肢を選んでいた,というお笑いの状況だったそうだ. 上記のインセンティブ構造に加えて,さらに次の三つの外部性が問題を拡げる. ・格安問題外部性: ある金融機関の保有する資産が毀損してきたので,それを売却 するとそれと同様の資産が下がり,さらなる売却を進めなる必 要があり,それによってまた資産が一層毀損していくという, 資産の毀損フィードバックループがかかりまくるという外部性 である. ・貸し渋り外部性: 金融機関が自身の財務内容を良くするために,スモールビジネ スなどのリスクの高そうなセクターに貸し渋りを行ったら, それらのセクターの景気が悪くなり,一層の貸し渋りが起きる という貸し渋りフィードバックループがかかりまくるという 外部性である. ・政府援助による銀行資本増強の外部性: 格安問題外部性と貸し渋り外部性を解消するために,政府援助 により金融機関の資本増強をすると,短期的には解消する気に はなるが,結局国民にコストを押しつけるだけで,銀行のイン センティブ自体はほとんど解消されないという外部性である. この帰結が現在のUS金融パニックである.そうPaulson財務長官の案では政府援助による銀行資本増強の外部性を生み出すだけなのだ.これに加えてこのペーパーには,Paulson案で提示されている規制強化が生み出すデメリットも示されている. このペーパーには現在の危機の解消策は提示されていないが,予防策は提示されている.それがCapital Insuranceである.つまりある金融資産に投資をするときには,保険の購入を義務づけるのだ.詳しくはペーパーを読んで欲しい. この危機の真っ最中に世界一の経済学者達からこんなきちんとした分析が出てくるのを見るにつけ,USのアカデミズムの底力を感じざるを得ないよな.今後,サブプライム問題やUS金融危機について偉そうに話をしたいと思っている人は,これくらいの文献は最低限押さえてから話して欲しい,と真面目に思う.
by yutakashino
| 2008-09-27 00:23
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