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2007年 01月 17日
Open Secrets
The New Yorkerの新年号に掲載されたMalcolm Gladwellの記事である。詐欺と証取法違反で24年の懲役刑の判決を受けたエンロンの元CEO Jeffrey Skillingを擁護する内容であるために、年始にリリースされてから賛否両論を生み、彼のブログもプチ炎上した。 BlinkやTipping Pointで提示された、Gladwellの認識論を巡る基本的な考え方が、時事的な事件をネタに、今回も踏襲されている。 Gladwellの主旨は明快である。世の中の問題は"Puzzle"と"Misterries"という二種類の区別できる。Puzzleは欠けている情報が見つかれば解けるような問題であり、Misterriesは情報がすべて開示されたとしても、絡み合っていて解くことが難しい問題である。Enron事件はPuzzleではなくMisterriesに所属し、すべての情報は開示されていたのだが、その情報があまりに大量で複雑すぎるので、Skillingを含めて誰もが正常に認識できなかったのだ。冷戦時代はPuzzleが多かったが、これからの時代は対立軸が多くあり、情報過多になるので、Misterriesが多くなる。従ってこれからの危機に際しては、Puzzle的なメンタルモデルだけではなく、Misterries的なメンタルモデルが必要になってくる。そしてMisterries的なメンタルモデルは、("Blink"で示されているような)問題の全体と詳細を同時に掴む職人芸的な認識能力が必要である。 問題をPuzzleとMisterriesに区別するやり方は、安全保障のエキスパートであるGregory Trevertonの著書"Reshaping National Intelligence for an Age of Information"て提示された方法である。Gladwellの例示では、ウォーターゲートのディープスロートやアルカイダの潜伏先を突き止める問題はPuzzleであり、ナチのプロパガンダ放送から新兵器(V1ロケット)の配備を推論することや、前立腺ガンを突き止めること、そしてエンロンの問題を認識することはMisterriesである。 Gladwellがエンロンの問題がMisterriesであると主張するのは、公開されている情報だけでエンロンの問題を気づいた人間が存在することを根拠にしている。エンロンの詐欺的スキームは大きくわけると二つあり、ひとつはmark-to-market会計で、これはまだ手に入っていない将来の売上を取引時の期に繰り上げて簿記してしまうために、必要以上に売上を大きく見せる効果がある。もう一つは多数の特定目的会社(SPE)を使った取引の複雑化で、これを用いると損失を膨大な取引の中に溶け込ませることができる。どちらのスキームも、ウォールストリート・ジャーナルの記者や、空売り専門のトレーダーが、公開情報だけから暴いている。さらには、米国歳入庁がエンロンに課税しなかったこと、コーネル大学ビジネススクールの演習授業でエンロンの価値は「売り」と判断したチームがいたことなども、エンロン問題がMisterriesであることの根拠付けとなっている。 Gladwellはさらに、Puzzleでは明確な犯人や責任の所在が明らかであるが、Misterriesでは責任範囲がグレーな広がりをもつと主張する。それを根拠に、エンロンの問題はMisterriesだからSkillingも自身の会社の問題の認識が難しかったはずで、すると責任範囲がグレーになるから、懲役24年という罪をSkillingだけに償わせるのは酷ではないか、という考えを示したことが賛否両論を引き起こした。まあこれについては、主旨とは離れるし、個人的な価値観だけに基づいた不毛なブルシットを言い合うだけに終わると容易に予想できるので、Gladwellの釣り師っぷりを褒めるだけでスルーしたほうがいいと思う。 Gladwellの記事に問題があるとすれば、次の点だと思う。PuzzleとMisterriesの区別はわかった、それではMisterriesに対処するにはどうすればいいのか、という実際的問題になるとGladwellの主張はとたん歯切れが悪くなるのだ。これはGladwellの一連の著書と同じで、経験とカンの達人がご登場、というわけである。そう、それでは「Misterriesを解ける人間も人類の中に存在することがある」としか主張していない。うーん…。 まあでも、それは望みすぎかもしれない。Misterriesの問題が存在するという主張、そしてそれはPuzzleを解くマインドセットとは異なるものを要求されているという主張の2点を、時事的なエンロン事件と一緒に指摘しただけでも、素晴らしいでしょう。オススメ。
by yutakashino
| 2007-01-17 08:59
| Business
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