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2006年 03月 28日
The Sun 敗戦間際からGHQ占領までの期間を、昭和天皇やその付近の人間の立場から描いたソクーロフの第二次大戦独裁者シリーズの傑作。いや、もう、昭和天皇役のイッセー尾形の演技がすごいのなんのって。 史実との齟齬があったり、GHQの本部と皇居の位置関係などが空間的にもおかしなことからもわかるように、これは歴史映画ではなく、ソクーロフの文学物語である。しかし、如何にも昭和天皇が経過した敗戦と占領と自身の変化の経験を、スタティックな画面構成と美術、そして出演人の臨機応変の演技により、十分な説得力をもって体験できる。 イッセー尾形の演技はすばらしすぎる。たとえば、報道で見聞きしている昭和天皇が口を半開きにして少し猫背で上をみる姿勢だとか、口をパクパクするしぐさだとか、「あっそう」という口癖だとか、そのような奇矯にも見える所作が天皇として必然のものとわかるほどだ。 侍従役の佐野志郎もドンぴしゃりである。占領軍からのハーシーズチョコレートの贈り物を「毒見」した後に、それまで食べたことのないような甘さに頬が緩む瞬間に、ハッとわれに返り「わたくしはあられの方が好きであります」というシーンが素晴らしい。 皇后役の桃井かおりはやっぱり桃井かおりだった。でも、きちんと皇后の桃井かおりだった。天皇と再会したときに夫婦としてのやり取りをするシーンは素晴らしいし、最後の侍従をにらんだ後に天皇の手をとって子供の下に導くシーンも感動的だ。 この作品のテーマは、東京大空襲や原爆投下などの戦闘や、同盟国と連合国のパワーポリティクスだとか、GHQ占領下の困窮生活というようものでない。ソクーロフ/イッセー尾形がテーマとして示しているのは、神としての天皇から人間としての天皇へのトランジションを昭和天皇が自ら選択したということだと思う。 そのトランジションはつぎのようである: 神として国民の誰をも思いやるがゆえに開戦し敗戦に向かわざるを得なかった様を思い出したかのように発言する場面や、御前会議での天皇の懊悩を含んだ神としての発言場面のように、神格の重責を担うことが最初のフェイズだ。この公務としての神格活動と対照をなすのが、海洋生物学者としてヘイケガニを観察する至福の場面である。このヘイケガニの場面があるから、神格の重責がいっそう引き立つ。 しかし、日本の敗戦を迎え、焼け野原となった東京を間近に見たうえで、占領軍兵士やマッカーサーとのやり取りを通して自分の立場を変えなければいけない圧力を感じる。これが移行フェイズだ。マッカーサーとの晩餐の後に、青い月明かりの元で神格を返上すると玉音放送での台詞を独りつぶやく場面が、まさに移行フェイズのクライマックスだ。 そして最後に、疎開していた皇后との再会時の夫婦の会話の場面がトランジションの完了フェイズだ。ここで天皇は神から人間に変わっていくのだ。ただ、完了フェイズにも最後に迷いがある。この迷いを振り切り、トランジションを完了させるのが皇后の役目となっている。 このDVD自体は、当然扱う主題が主題だけに日本でもアメリカでも手に入らず、amazon.co.ukにて手に入れた。ところで、amazon.co.ukはつかえますねー。送料が700円程度の上に、注文してから5日程度でついたのだ。とても好印象だったので、しばらくusでなくukを使ってみますかね。 とにかく、これはオススメですよ!
by yutakashino
| 2006-03-28 13:53
| Movie
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